川内原発再稼動に際して
去る八月十一日、川内原子力発電所1号機が再稼動しました。しかし乍ら未だ多くの東日本大震災原発事故による避難者が帰宅出来ずにいる現状や、将来の放射性廃棄物の処分場問題を鑑みても、原子力発電の再開はまことに残念であり、遺憾に存じます。また原発事故から四年半が経ち、次第に人々の記憶からその恐ろしさが薄らいでいることも危惧します。
仏教では、渇いた者が陽炎を見て水だと勘違いするような強い希求心を「渇愛」といいます。正しく物事を見ることが出来ない原因の一つです。
「安定的でより安価なエネルギー」は誰もが望むところですが、経済性や利便性ばかりを求めていては、陽炎を水だと思うような思い違いをしてしまうかもしれません。
私達妙心寺派教団は、平成二十三年九月に「原子力発電に依存しない社会の実現」を宣言致しました。大切なことは自らを調え、足るを知ることです。未来の子供達のためにも、原子力発電に依存しない、持続可能な共生社会を作るためにさらなる努力を致します。
平成27年8月26日
臨済宗妙心寺派 宗務総長 栗原正雄