法話の窓

あなたにめぐり逢えて ほんとうによかった

 新緑のまぶしい好時節を迎えました。新年度がスタートして1ヶ月が過ぎ、環境が変わり新生活にもだんだんと慣れてきたことでしょう。
 私たちは日々の生活の中で多くの人と出会っています。新しい環境で新たな出会いがあり、また懐かしい知人との再会もあることでしょう。人との出会いは緊張感もありますが、楽しみのひとつでもあります。

 私たちは、普段何気ない生活の中で、行き帰りの道でただすれ違う人、同じ電車に乗りあわせたり、同じ時間スーパーで買い物をしたりする人など、仮に1日1000人の人と何らかの形ですれ違うと仮定しましょう。そうしますと、1ヶ月で約3万人の人とどこかですれ違う計算になります。あくまでも計算上ですが、そうすると1年で約36万人、10年で約360万人、日本人の平均寿命が80歳だと仮定しますと、この一生でどこかで出会ったり、すれ違ったりする人の人数が、延べ約2880万人となります。この数字、多いですか? 少ないですか?
 数字だけ聞くと、「ええ~そんなに~」と思うかもしれません。日本の人口は現在約1億2800万人です。ということは、私たちが普通に生活していましたら、どう頑張っても、あと1億人の人は、すれ違うことすらできない人達なのです。

 では一生のうちに、話したり、一緒に遊んだり、仕事で同じ時間を共有したりする人、また友達と呼べるほど深い付き合いができる人はどれくらいいるのでしょう。一生のうちに本当の意味で出会うことができる人は、ほんの一握りだけなのです。こう考えると、皆さんが今この瞬間に出会い、共に学び、会話をし、涙を流し、笑い合い、共に成長し、一緒に同じ時間を過ごすということは、ものすごく貴重なことなのです。奇跡としか言いようがありません。そして、出会いというのは永遠のものではありません。いつかは別れなければならない儚いものなのです。だからこそ、出会えた喜びを大切にしてください。

 書家の相田みつをさんの詩に「めぐりあい」という詩があります。その詩の書き出しが「あなたにめぐり逢えて ほんとうによかった」から始まります。皆さまにも、人生の中で、そう心から言える人との出会いがあったことでしょう。人生そのものを根底から変えてくれた人、進むべき道を示してくださった人、困っているときに手を差し伸べてくれた人…。その時の思いを大切にしたいですね。
 これからも「あなたにめぐり逢えて ほんとうによかった」と心から言える出会いがありますように。

 

入不二香道
 

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