「卯年に思うこと」
あけましておめでとうございます。今年はウサギが主役の年です。
ウサギといえば、中学生の頃の想い出があります。家の手伝いで山の草刈りをしていた時のことです。汗を流しながら背丈が自分の腰くらいまである草を刈っていた時、正面からヒョッコリとウサギが出てきました。ウサギは突然目の前に人間が現われたのでビックリ、もちろん私も腰が抜けるほどビックリ。ウサギはこういう事態を見なかったことにしようと思ったのか、それが習性なのか解りませんが、うつ伏せになり死んでしまいました。私はぼう然とただ見ているばかりです。私の様子を、実は死んではいないウサギが薄目を開けて見ていたのか、ピョンと跳ね上がり、すたこら逃げていきました。ウサギの作戦勝ちでした。
昨年のサッカー・ワールドカップで、ウサギのように作戦が良かったのか日本チームは大活躍でした。優勝候補のドイツやスペインに勝ち、ベスト16まで進んだのは皆さんご存知の通りです。この時日本では、
「奇跡だ!大金星だ!」
と大騒ぎでした。スペインを破った時、堂安選手は、
「これで、1戦目が奇跡じゃなく必然で勝ったと国民のみなさんに思ってもらえる。」
と振り返っています。私は、選手をリスペクトするのに「金星だったね」と言うのは少し失礼ではないかな、と思っています。堂安選手と同じ言葉を聞いたことがあります。8年前、ラグビーの試合で日本が優勝候補の南アフリカを僅差で破った時に五郎丸選手は、
「この勝利は奇跡か?」
という記者の質問に対し、
「必然ですね。ラグビーに、奇跡なんてありませんから。」
と答えました。堂安選手も、五郎丸選手も「必然」という言葉を使っています。それだけ日々の練習に裏打ちされた自信が言葉となって現われたのだと思います。二千五百年も前にお釈迦さまは精進しなさいと言われました。日々の努力が大切ということです。
その昔、黄檗禅師が旅をしている時一人の僧と出会い、
「旅は道連れ世は情け」
と、仲よく旅をしました。とある川にさしかかった時、急流で渡るに渡れません。僧はすたすたと水面上を歩き手招きして、
「あなたもこちらへ。」
と言いました。禅師は大きな声で叱りつけ、
「お前がそのような化け者坊主だとわかっておれば、足のスネを叩き切ってやったものを!」
と激しい口調で言いました。すると僧は、
「あなたこそ真の大乗の器だ。」
といい、スッと消えたということです。
人は努力しない人ほど奇跡や金星などを望み、見たがります。人生の岐路に立った時、悩みに悩んでも決められないのか、即決即断するのかは自分自身です。自分の努力の積み重ね以外に自分自身を全うする道はありません。今年も精一杯、精進に精進を重ね人生の一コマを悔いのないように過ごしましょう。「必然」の出会いが待っているかも分かりません。「必然」の結果が出るかも分かりません。よき年になるのか、ならぬのかは、自分次第というところです。