法話の窓

永遠のいのち(2008/05)

うちかざられし
王車も古び
この身また
老いに至らん 
されど心ある人の法は
老ゆることなし
心ある人はまた
心ある人につたうればなり(法句経)

 

 この世は無常であります。すべてのものに永遠なものはなく、いつかは滅びていくものだとお釈迦様はお説きになられました。どんなに豪華絢爛な王様の車であっても、いつか古びて使い物にならなくなりますし、私たちの体も老いて死を迎えることになります。

 

なんのために 生まれて
なにをして 生きるのか
こたえられないなんて
そんなのは いやだ!
(アンパンマンのマーチ)

 

 子供たちに人気のアニメ番組、『それいけ アンパンマン』のオープニング曲の歌詞の一節です。作詞はアニメの原作者でもある、やなせたかし氏です。私が初めてこの歌詞を聞いた時、大人として胸の痛いところを突かれて恥ずかしい思いを感じました。
 何のためにこの世に生まれ、何をして生きるのか。これは私たちが避けて通ってはいけない人生の命題であります。しかもこの世は無常迅速です。うかうかしていたら答えが見つかる前に旅立ちの日が来るかもしれません。
残念ながら未熟者の私には、まだその命題に答えられるものがありませんが、その与えられたいのちを使い世の中に何かご恩がえしができればと願っています。

 

  花のたましい
ちったお花のたましいは
みほとけさまの花ぞのに
ひとつのこらずうまれるの
だって お花はやさしくて
おてんとさまがよぶときに
ぱっとひらいて ほほえんで
ちょうちょにあまいみつをやり
人にゃにおいをみなくれて
風がおいでとよぶときに
やはりすなおについてゆき
なきがらさえも ままごとの
ごはんになってくれるから
(金子みすゞ)

 

私のお寺は山を背負い自然がまだ残っている場所にあります。四季の移り変わりによる木々の変化や草花を見て暮らしています。そのせいでしょうか、私はこの詩の花のような人間になりたいと思っています。この詩は花を通して、私たちがどう生きることが仏様の願いにかなうのか教えてくれます。


・優しくあること。
・自然の摂理に従うこと。
・誰にでも微笑むこと。
・惜しむことなく与えること。


 そして花のいのちは短いですが、今、ここに精一杯生きた花のいのちは「みほとけさまの花ぞの」で永遠のいのちを頂くのです。

 

 この世は無常でありますが「されど心ある人の法は 老ゆることなし 心ある人はまた 心ある人につたうればなり」と法句経にあるように、お釈迦様の真理の教えは二千数百年、開山様の法も六百五十年伝えられ私たちの中に生き続けています。私たちも今、日々の暮らしの中で周りの人々や世の中に、何かしら与えた貢献は時を越え静かに伝わっていくと思います。それは人から人へと連鎖して、百年よりも先に及ばすこともできると思うのです。
 例えば誰かに優しさをもらったら、次の誰かにその優しさを伝えていく。その優しさがまた次の誰かへと伝わっていく。どんどんと広がっていきます。そして世代を超えて未来へも......自分の名は世間に残るわけではありませんが、未来へ何らかの貢献ができればよいと願っています。この世に永遠のものはありませんが、私のいのちが死後もつながっていくと思えるのです。

寺町 宗峰

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