法話の窓

ハート クリーン クリーン(2009/07)

 今日、諸外国におきましても「禅」が「ZEN」に字を変えて定着しつつあります。
禅のすばらしさがよその国でも認められた証でしょう。
 私が修行道場に入門した二十年ほど前にも、禅に興味のある外国人の方が、多く来られ、私たち修行僧と似た生活を送っておられました。そのころ、日本へ来たばかりの白人男性が老師様に片言の日本語で「坐禅をするとどうなるのですか」と尋ねました。私にとっても非常に興味深い質問でどう答えられるか楽しみでした。老師様はその質問に対して、身振り手振りで、胸のあたりを撫でながら「ハート、クリーン、クリーン」と答えられました。私は老師様の動作と言葉で「心の掃除」と思い浮かべました。

 

 私の寺にご先祖のお墓があるおばあちゃんのOさんという方がおられます。年齢は八十歳代でたいへん小柄な方ですが毎朝三キロほどある道のりを手押し車を押して来られます。ご先祖のお参りをすませ、次は周りのお墓の掃除やら草取り、また、花が枯れていれば焼却炉へ捨てにいかれます。まさに自他の区別なく尽くすお方です。
 このように、毎日世話をして下さるので周りの人も大喜びです。私も感謝して「他のお墓までありがとうございます」とお礼を言うと「仏様は同じですから」と言われました。
 このOさんにとって「仏様は同じ」と思われる気持ちこそ、自他の区別なく隔てのない行動ができるのだと思います。
自分も他人も、皆が幸せを感じる世の中を築いていくためには、まず自分の心の中の二人の調和が大切です。この二人が調和した時、初めて他人の幸せを願えるのです。
それぞれの人が、それぞれの方法で、老師様の言われる「ハート、クリーン、クリーン」をみつけて下さい。
 そうしてお互いが尽くしあえる、住みよい幸せな世の中を築きましょう。

高田慈雲

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