法話の窓

笑顔の配達人になろう(2012/09)

 浜の友人から わかめ の宅配便が届きました。青い磯の香りの中に「お前にどうしても食べさせたい」と書かれたメモが同封してありました。宅配便は楽しみです。何が入っているのだろうかという期待と、温かな心のぬくもりが込められているからです。

 ある評判のよい一流レストランに一人の老婆が訪れました。メニューを眺めて、笑顔のウエイトレスに、二,三品のものを注文いたしました。料理が届けられると、その中の一つが間違いであることが指摘されました。
 メモ用紙を示しながら、笑顔で説明しておりましたが、老婆は自分の考えを主張し、だんだん興奮してきて声も大きくなってきました。まわりのお客さんの目も時々このテーブルに向けられていました。
 その時、黒い服を着た支配人と覚しき人がそのテーブルに近づき、
 「大変失礼いたしました。当方の不注意でご迷惑をおかけいたしました。ご注文の品をすぐお持ちいたしますので、しばらくお待ち下さいませ」
 と、厨房の方へ向かいました。
 しばらくすると、先程のウエイトレスが、料理を持参し、
 「先程は、とんだあやまりをいたしましてお許しください。どうぞ、ごゆっくりお召しあがり下さいませ」
 と、笑顔で頭をさげました。
 一時はどうなる事かと心配していたまわりの人たちは、「さすが一流レストラン」と安心し感動しました。
 一人の客が洗面所の鏡の前に立った時、その鏡の横に何か文字が書かれていました。


 「笑顔製造機」


の五文字でした。一流レストランと呼ばれる原因はここにあったのです。

 鏡って何だろう......と改めて考えさせられました。身だしなみ・化粧の必需品です。
 もっと大切なことがあったのだ。己事究明(こじきゅうめい)といって、鏡は自分と向きあう道具であり、それは人生の大事な修行(業)なのです。
 人間は、顔を赤らめる(懺悔)ことのできる唯一の動物であり、又、赤らめることを必要とする唯一の動物であるともいいます。


 鏡の前で、自分と向きあって、
 自分の心を調え 心の方向転換し
 心の汚れを取り去り 修行し
 心の化粧をした時が 笑顔なのです


 国には、記念日・祝日があります。私達にも、誕生日・卒業・就職・結婚等の記念日がそれぞれあります。
 もう一つ加えて頂きたい記念日があります。

 

 いつでも どこでも
 誰にでも できる笑顔
 今を 今日を 笑顔記念日にしよう
 そして 笑顔の配達人になろう

 

 "咲く"さくとよみますが、"わらう"とも読みます。花の開くことが咲くで、それは花がわらっている一番すばらしい美しい時なのです。
 社会不安の中に、笑顔の宅急便をおくり、世の中に花の絨毯(じゅうたん)を敷きつめ心の花園にしたいものです。笑顔の花弁と芳香を撒き広めようではありませんか。

 

 極楽も 地獄も 己が身にありて
 鬼も 仏も 心なりけり


 此の世は、自分を探しにきた処
 此の世は、自分を観に来た処

                       (河井寛次郎)

 

 蝸牛角上(かぎゅうかくじょう) 何事ヲカ争ウ
 石火光中(せっかこうちゅう) 此ノ身ヲ寄ス
 富ニ随イ貧に随イテ 且(しばら)ク歓楽セン
 口ヲ開キテ笑ワザルハ 是(これ)痴人(ちじん)
                       (白楽天)

 

松山裕道

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