法話の窓

015 「僕の葉っぱはどこ?」

 庭の木や花は、梅雨があけて、たっぷり水をくみ上げぐんぐん成長しています。でも、一つだけ葉っぱの枯れた草が庭の隅にあります。それは、秋になると花を咲かせるヒガンバナでした。

 毎年毎年、秋になるとヒガンバナは不思議に思っていました。周りの木や草は、花が咲いた時、大切な栄養を作ってくれた葉っぱたちが、それを喜ぶように風にゆれているのに、どうして僕には葉っぱがないんだろう、と。すると、お日さまが教えてくれました。
「ヒガンバナ君。君が花の幹をどんどん伸ばし、きれいな花を咲かせる栄養を作るために、君の葉っぱは君が芽を出すまで、たくさん繁っていたんだよ。それこそ寒い冬、霜にあたり、雪に押しつぶされても、君がきれいな花を咲かせるようにって、頑張っていたのさ。そして、たっぷりの栄養を蓄えて、今年もきれいな花を咲かすことができそうだとわかると、葉っぱは枯れて姿を消してしまったんだ。」

 ヒガンバナはびっくりしました。僕がぐんぐん幹を伸ばせるのも、きれいな花を咲かせることができるのも、今は目に見えない葉っぱたちが寒い冬も、風が冷たい夜も葉っぱを繁らせて栄養を蓄えていてくれたからなんだ、と。

 みなさんは、どうでしょうか。サッカーをしたり、野球をしたり、きれいな新しい服を着ることができたり、おいしいお弁当を食べたり、ヒガンバナ君が花を咲かせるように輝いているとき、どれぐらい目に見えないものに支えられているでしょうか。

 お日さまに葉っぱたちのことを聞いたヒガンバナは、今年はいつもよりきれいに花を咲かせるはずです。目に見えないものに気づいた皆さんも、きっと生き生きと輝くような日々を送ることができるでしょう。

宮田宗格

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