法話の窓

016 苦しみのもとって何やろ?

 江戸時代(えどじだい)に白隠(はくいん)というおしょうさんがおられ、「苦しみのもとはなあ、自分の愚(おろ)かさにあるのじゃ!」と言われました。もちろん、ほかの人々や自然災害などによって苦しみを受けることもあるけれど、自分の愚かさによって苦しみを作っていることもあんがい多いんです。


 たとえば、夏休みに入って「宿題は後からやればいいや」と思って遊んでいたら、休みの終わりごろになってあせってしまったなどという経験はありませんか?

 私(おしょうさん)は小学校2年生の夏休みに、自分で自分の苦しみを作ってしまったことがあります。宿題の工作を自分で作らず、もう出来ている物を学校へ持って行ってしまったのです。それは、中学生が作った作品で、小学2年生ではとても作れない立派なものでした。

 

 同級生からは、「本当に自分で作ったの?」と聞かれましたが、はっきり答えられません。先生は、「じょうずに作ったねェ」とほめて下さいましたが、私が作った物でないことは知っておられたはずです。

 それ以来私は、「何であんなことをしてしまったんだろう」と思い悩(なや)むようになりました。時々思い出しては、「ああ、とんでもないことをしてしまった」と悔(く)やんでいました。小学2年(8才)の時に自分で作った苦しみは、30才になるまで続きました。もうこんな愚かな失敗は、二度としたくありません。そして、若いあなたたちにも、こんな思いをしてほしくないのです。

 腹が立ったからといって相手を傷つけたら、あなたの心にも傷が残るのです。白隠さんが、「苦しみの原因は、自分の愚かさにある」と言われた言葉を胸において、自分で自分の苦しみを作るなどということのないようにしましょう。

飯沼宗秀

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