028 よいことをしなさい
昔、中国に白楽天という人が住んでいました。
近所のお寺の道林和尚さんは、いつも木の上で坐禅をくんでいました。
ある日のこと、道林和尚さんが木の上で坐禅をくんでいると白楽天がやってきて、
「和尚さん、危ないよ。」と声をかけました。
すると道林和尚さんも下をみて、「危ないぞ。」と言いかえしました。
白楽天がたずねます。「私は地面に立っています。和尚さんの方こそ木の上にいて、いつ落ちるかもわからない。危ないじゃあないですか。」
道林和尚さんは、「危ないのはお前の方だ。上ばかりに気を取られている。気をつけないとつまずくぞ。」と言いました。
さらに白楽天がたずねます。「人間にとって、一番大切なことは何ですか。」
道林和尚さんは、「悪いことをせず、善いことをすることだ。」と答えました。
それを聞いた白楽天は、「和尚さん、そんな簡単な事ぐらい子供でも知っていますよ。」
というと、道林和尚さんは、
「その子供でもわかっているような事が、いざ実行するとなると大人でもむずかしいのだ。」と言いました。
みなさんはどうでしょうか。
やっていいこと。やってはいけないこと。ちゃんとわかっていますか。
香泉芳宗