法話の窓

046 桃・栗3年、柿8年

 11月を迎え急に野も山も紅葉が始まり秋らしくなりました。そして店頭にはいろいろな果物がたくさん出まわり私たちを楽しませ、喜ばしてくれますね。

 さて果物について、こんな言葉があるのを知っていますか。

「桃栗3年、柿8年、梅はスイスイ13年、梨はゆるゆる15年、柚(ゆず)の大バカ18年、ミカンのマヌケは20年」
 これは決して果物を悪くいっているわけではありません。昔から「桃や栗なら3年で、柿は8年で実がなり始める」ということです。

 私たち人間はもっと早く、そしてもっと味のいい実を取ろうと考えます。そこで挿し木(さしき)や接ぎ木(つぎき)、とり木、交配などいろいろな方法や工夫をしてきました。

 果物に限らず、本来自然のままに生まれ育っていく限り、動物も植物も、そのものの一生は、全て生まれた時に定まっています。

 桃や栗は3年で実が成り始めます。その形や味も、そのものの本来の特性に従って育ち、成長していきます。犬はワンワン、猫はニャーニャー、雀はチュンチュンと今も昔も同じように鳴きます。

 皆さんはどうでしょうか。おそらくあなたの人生はあなたの心次第で、どのようにでも変化していくと考えられます。一生でなくても、一日の生活でも一所けんめいに生きた一日と、何もせず怠(なま)けてしまった一日とでは、すっかり違った一日となることでしょう。つまり一生を幸せにするのも不幸にするのもあなたの心の使い方次第ということです。

 そして人間の心や特性は、果物の木のように挿し木や接ぎ木もできません。あなた自身が自分の力で育てていかねばなりません。仏教や禅の教えは、その心について教えています。自分を幸せにしたいなら一度仏教の教えを学び、坐禅をしてみるのもいいと思います。

 その仏教の教えを一言でいえば「正しく、強く、親切に」の3つに要約ができます。まさにあなたの心の使い方が示されているといえます。どうかすばらしい心を見出し、すばらしく使い切って頂きたいものです。

横田宗忠

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