054 いただきます
和尚さんは毎朝まちを散歩します。ある朝、大通りの繁華街を歩いていると家庭や飲食店から出されたものでしょうか。半透明の袋が幾つも幾つも重ねられ、ゴミの山が通りの両脇に築かれていました。そして、そのゴミの山にはたくさんのカラスが群れて騒いでいたのです。
カラスは辺りかまわず袋を引きずり回し袋を破り中から自分達の餌として生ゴミをつまみ出していました。あたり一面は生ゴミだらけでした。近頃よく見かける風景です。ステーキやハンバーグにご飯、パン、魚の切り身、刺身あらゆる料理の食べ残しが道に散らばっています。捨てられている料理には多くの食材が使われています。お肉は牛さん豚さんニワトリさん・・。お魚はマグロさん、カツオさん、ヒラメさん・・。お野菜には大根さん、ニンジンさん、・・。ご飯のお米さん、パンの小麦さん、なんと多くのいのちが使われていることか、そしてそのいのちが捨てられて行くのか、トラックの荷台に載せられ悲しそうな鳴き声を上げながら運ばれてゆく牛さんや豚さんの行きついた姿かと思うと、とても切なく悲しい気持ちになりました。
この世の中において、私たち人間に食べられてもよいと思って生きている動物や植物は何もありません。私たちと同じようにお父さんお母さんと一緒に生きていきたいのです。しかしながら私たち人間は悲しいかな他のいのちをいただなければ生きていられません。生きていくことは他の多くのいのちをいただくことにほかなりません。毎日、わたしたちの前に出される食べ物はわたしたちと同じ世界にかつて生きていたもの達なのです。私たちと同じいのちなのです。だからこそ、食べ物をそまつにすることなく必要な分だけ大切にいただきたいものです。私たちは多くのいのちに支えられ生かされている事に感謝し、食事のまえには手を合わせておとなえしましょう。
「いただきます」―あなたの尊いいのちをいただきます。あなたの尊いいのちは私のいのち中に活かしていきます―。
石川元信