法話の窓

055 みんなちがって...

 今回は「すききらい」について少しおはなししましょう。

 おしょうさんには6歳の息子と4歳の娘がいます。この前、娘の方がおしょうさんにこんな質問をしてきました。

 

「ねえ、おとうさん。ひらがなのAとBとどっちがすき?」

 

 アルファベットのAやBをひらがなだと思っている娘は最近、お兄ちゃんのまねをして字の練習(らくがき?)をはじめ、AやBが書けるようになったのがうれしくてたまらないようなのです。おしょうさんはその質問を聞いてすぐには答えられませんでした。なぜなら、おしょうさんにとって、AもBも別にすきでもきらいでもないただのアルファベットだったからです。でもにこにこしながら待っている娘の顔を見ていると、何か答えてあげないといけないと思ったおしょうさんはこう答えました。

 

「おとうさんはどっちもすきだよ。」

 すると、その答えを聞いた娘はちょっと不満そうにこう言いました。

「わたしはAのほうがすき。だって書きやすいもん。Bは難しいからきらい。」

 

 娘はいつの間にかAとBを比べて、自分が書きやすいAをすきになっていたのです。

 このようにみなさんにもすききらいのひとつやふたつ、いやもしかするともっとたくさんあるかもしれないですね。そして「野菜よりはお肉がすき」とか「国語よりは算数がすき」というように、何かと何かを比べることですききらいは生まれるようです。

 そしてこのすききらいのために、時にはいやな思いをすることがあります。みなさんもたくさんそんないやな思いをしているのではないでしょうか。おしょうさんももちろんたくさんしてきました。

 そんないやな思いを少なくするために、すききらいをできるだけなくしていきたいですね。そのためにはどうすればいいのでしょうか。おしょうさんは少し前のところでこう書いていました。「何かと何かを比べることで・・・。」つまり比べなければいいのです。比べなければすききらいも出てこないのですから。でもそれはなかなか難しいことです。ついつい気付かないうちに比べてしまって・・・。そこでおしょうさんが比べなくなれる言葉を紹介します。そのことばは金子みすゞさんの「私と小鳥と鈴と」という詩の中にでてきます。



      『私と小鳥と鈴と』

私が両手をひろげても、お空はちっとも飛べないが、

飛べる小鳥は私のように、地面(じべた)を速くは走れない。

私がからだをゆすっても、きれいな音は出ないけど、

あの鳴る鈴は私のように、たくさんな唄は知らないよ。

鈴と、小鳥と、それから私、みんなちがって、みんないい。

 

 この詩の最後のフレーズ「みんなちがって、みんないい」こう思うことができれば、比べることも少しはなくなるのではないでしょうか。一度きらいになってしまうとなかなかいいところに気付けません。ほかの人や物と比べるのではなく、それぞれのいいところを見つけていくことで、すききらいがひとつずつでも減らせるのではないでしょうか。そうすることで毎日の生活が今より少しでも楽しくなればいいなあと思うのです。

今野慈耕

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