法話の窓

065 夏休みの思い出は・・・

 私は小学校5年生の夏休みの時に、富士山に登りました。みなさんも知っているとおり、日本で一番高い山ですね。その高さは3776メートルあります。その富士山に、私のお父さん、お母さん、弟(当時、小学校三年生)、私の四人で登りました。

 まずは、車で約2400メートルのところまで上ります。さあ、いよいよ、自分の足で登山を始めます。遠くからながめると美しい富士山も、近くに行きますと、茶色の溶岩がゴロゴロしていて、あまりきれいではありませんし、登山道も険しいなあと思いました。

 最初は張り切っていたのですが、少し登ると、息苦しくなり、なんだか頭が痛くなってきました。お父さんは「それは、高山病だよ。あまり苦しいのだったら、そこの山小屋で休んでいるといい。帰りに迎えに来るから」と言いました。私は、置いていかれるのが嫌で、がんばって登り続けました。なにしろ、私より小さい弟が平気で登っていましたからねえ・・・。

 少し休むと楽になりました。しかし、また歩き始めると、調子が悪くなります。何度も「もうやめようかなあ」と思いましたが、そう思うたびに「もう少しだけ」と考え、ふらふらしながらも何とか頂上に立つことができました。声も出ないほど疲れていましたが、心の中では「やった、やった。」という気持ちで一杯です。もう自分より上には、真っ青な空しかありませんでした。

 

 さて、この富士登山は、私にとって、どんな思い出なのでしょうか?実は、ただの苦しかった思い出ではありません。

 人生には、いろいろな難しいことがありますよね。それは、私もみなさんも誰でも同じです。辛いこと、悲しいこと、苦しいこと、逃げ出したいこと・・・。

 でも、安心してください。それを乗り越える力は、みなさんにも必ずあります。それはいったいどこにあるのでしょうか?

 答えは、こころにあるんですね。誰でも持っているこのこころこそが「たからもの」だと、ダルマさんは言いました。

(くわしくは、バックナンバーvol.43 「たからもの」をみてね)

 

 その後も、辛かったり、苦しかったりしたことがたくさんありました。高校や大学の受験勉強、会社のむずかしい仕事、お坊さんの修行・・・。小学5年生の夏休みに頑張ったことが、大人になっても「たからもの」です。この「たからもの」のおかげで乗り越えることができました。そして、乗り越えるたびに「自信」がつきます。そうするとまた次のことに体当たりしていく力がわいてくるのです。

 みなさんも、残り少ない夏休み、いろんなことにチャレンジして、「たからもの」を見つけてみてください。お父さんやお母さんにお願いして、どこかへ連れて行ってもらってもいいです。宿題や自由研究の中で、ちょっと難しいかなあと思うことに挑戦してみてもいいですよね。そこで頑張って手に入れた「たからもの」は、辛いときや苦しいときに、きっと力を貸してくれるに違いありません。

服部雅昭

ページの先頭へ