法話の窓

097 自分で選んだ道

 みなさんは自分が生れてくる前のことを覚えていますか?

おそらく覚えている人はほとんどいないと思います。でも、お父さんやお母さんはみなさんが生れてくる前のこと、生れてきたときのことをいまでも忘れることなく覚えてくれています。

 初夏の頃、私たち夫婦は新しい命を授かりました。家内とわたしは大喜びしました。そして戸惑い、不安にも襲われました。そんなとき、二人で力を合わせて、赤ちゃんを守っていこう、育てていこうとお互いに励ましあいました。

 お腹が大きくなり、「ポコポコ」、「どこどこ」と赤ちゃんがお腹を蹴るたびに、驚き、感動し、「坊や、大丈夫だよ!」と優しい声をいつも二人でかけています。

 鮫島浩二さんが著書『わたしがあなたを選びました』の中で、「おかあさん、あなたの期待の大きさに、ちょっぴり不安を感じます。初めての日に、わたしはどのように迎えられるのでしょうか?わたしの顔はあなたをがっかりさせるでしょうか?わたしの身体はあなたに軽蔑されるでしょうか?わたしの性格にあなたはため息をつくでしょうか?」とお腹の中にいるころの赤ちゃんの気持ちを書いています。

 でも、どうでしょうか?「おぎゃー」と産声をあげ、赤ん坊をはじめて抱き上げたとき、喜ばないお母さんはいませんよね。わが子の顔を見て、がっかりするお父さんはいませんよね。そんな心配はいらなかったのです。わたしたちは待ち焦がれて生れてきたのです。

さらに、鮫島さんは、赤ちゃんを代弁して綴ります。「おとうさん おかあさん あなたたちのことを、こう、呼ばせてください。あなたたちが仲睦まじく結び合っている姿を見て、わたしは地上におりる決心をしました。きっと、わたしの人生を豊かなものにしてくれると感じたからです。おとうさん、おかあさん、今、わたしは思っています。わたしの選びは正しかった。わたしがあなたを選びました」と・・・わたしたちは、選ばれて生れてきたのではなく、自分で選らんで生れてきたのです。

 ある助産師が言いました。「妊婦の方は気づかないかもしれませんが、女性が人生の中で一番輝き、美しくなるのは、赤ちゃんがお腹の中にいるときなのです。そして、それを支える男性も一緒に輝くのです」と。 みなさんは、そんなお父さんとお母さんを見て、きっと豊かな人生になるものと信じて生れてきたのです。もっと自分に自信を持って行きましょう。あなたの選んだ道なのだから・・・

小林秀嶽

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