お坊さんの頭は何でツルピカ?
いつの法事だったか忘れてしまったが、あるご法事でこれからお経が始まろうかという時に、背中の方から子供がひそひそ声で「お坊さんはどうして髪が無いん? 何でツルピカなん?」と言うのが聞こえた。
以前は、「法事は孫の正月」という言い方がありその言葉が示すとおり、法事の席に子供たちが何人もいるのが当たり前だったが、最近はそんな光景は少数派になってきている。だから「お坊さんはなぜ髪がない?」というような素朴な子供の疑問は、とても貴重だと思ったので、お経のお勤めの後そのことについての話をした。もしかしたら子供だけではなく大人でも疑問に思っている人がいるかもしれないし。
「お坊さんの頭がツルピカなのには大きくいって二つの理由があります……。
今から2千5百年も前のインドで、お釈迦様が出家修行をなさっていだ時、お釈迦様は髪の毛を剃ったお姿でした。亡くなられる時は違っていましたが、いわゆる「ツルピカ」の頭がお釈迦様のトレードマークだったのです。ですからそのお釈迦様と同じような姿をしていれば、少しでも「お釈迦様のさとり」に近づけるのではないかと考えて、現代のお坊さんが頭を剃っているというのがひとつめの理由です。
もう一つは、髪の毛は煩悩(ぼんのう)の象徴、という意昧があるということです。煩悩とは、たとえば「あれが欲しい、これはいらない、あれが好き、これは嫌い」という欲望です。そういった欲望の気持ちは、断ち切ってしまうことはなかなか離しいし、たとえいったん断ち切ったとしても、再びそんな気持ちがむくむくと湧いてくるのです。
髪の毛もそれとよく似ています。煩悩を断ち切ろうという願いをもって、お坊さんたちは髪の毛を剃って頭をツルツルにして出家しますが、時聞が経つとまた伸びてきてしまいます。どうしたらよいでしょうか?
伸びたら剃るしかありません。伸びたらまた剃る、伸びたらまた剃るの繰り返しの姿が、お坊さんのツルピカの姿なのです。お坊さんのツルピカの姿は、次々と湧いてくる(生えてくる?)煩悩と戦っている姿だと理解してください。その戦いに勝利するのはなかなか難しいですが、その困難に立ち向かっている姿勢は尊いものです」。
豊岳澄明