法話の窓

【一滴水】健体康心(2012/07)

 私たちは、たくさんの願いの中で生活していますが、その中でどれか一つをといわれると、「健康でありたい」というのが一番の願いになりそうです。
 特に健康を害した時、その有難さが実感できるものだと誰しもが口にするものです。
 お釈迦さまも、人生訓を説いた『法句経(ほっくきょう)』の中で、
 

 健康は最上の利益であり、
 満足は最上の財産であり、
 信頼は最上の親族であり、
 心の安らぎこそは最上の幸せなり
 

 と、健康について説いているのです。
 つまり、身体が病めば心も病み、心が病めば身体にも影響する。心身共にバランスのとれた、おだやかな暮らしが大切なことを説いているのです。
 現代人は不健康な人が多すぎるような気がします。精神的ストレスによる病気の人、汚職を繰り返す人などのように現代病に心を蝕まれてしまい、経済的には極めて豊かになったはずなのに少しでも幸福感を味わえないで、

 むさぼりの心『貪(とん)』に浸され、
 それが妨げられると、
 怒りの心『瞋(じん)』になり、
 取り返しのつかない、
 おろかな心『癡(ち)』で、
 ふたたび過ちを繰り返すような事件が多く起こるのは、いったいどうしたことでしょうか。
 たった一度の人生が、いかにも「もったいない」とは思いませんか。
 「ありがたい」と、心の働きがもてる人こそ、真の健康者であって、心の安らぎを得ている人でもあります。
 二度とない人生だから、自らを調え、生活(くらし)を調えて、健体康心に気をつけたいものです。そして、調えられた自分が、いま為すべきこととして、みんなで幸せになれるよう、自分でできることを精一杯に実行し、他に喜びを与える生活(くらし)に心がけたいものです。
 

田尻和光

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