法話の窓

【一滴水】お盆を迎えて(2012/08)

 今年もお盆がやってきました。
 なつかしい御先祖の思い出や、新亡として初盆をお迎えになる方など、さまざまでしょうが、お盆は亡き人と心を通わせる大切な行事でもあります。
 生まれた時から重度の先天性筋肉疾患(病名・ミオチュブラーミオパチー)という難病を患い、全身の筋肉に障害があるため、自分の力ではほとんど動くことができず、呼吸さえも困難な病気と闘っている『大和(やまと)』くんが両親と共に地元の小学校へ入学したのは一昨年のこと、しかし、入学式だけですぐ病院生活に戻ってしまいました。
 ようやく、二学期からクラスの友達にも会うことができ、人工呼吸器を着けられるように切開手術をしたため声は出ないけれど、担任の先生の特別指導もあってみんなと一緒に勉強することができるようになりました。
 給食の時間はクラスの仲間と楽しいひとときを過ごし、運動会にも車イスで参加して綱引きや、ボール運びなどをみんなと共にがんばりました。
 特にディズニーや絵本が大好きな大和くんは、難病を抱えながら普通の男の子と変わらない学校生活を両親と共に送っていました。
 が、運命のいたずらでしょうか......。この春、大和くんはひとりで天国へ逝(い)ってしまいました。祖父母や両親、クラスの友だちに見守られて......。
 とても、つらく悲しいお葬式でした。
 クラス全員が大和くんにお別れの歌をうたって、思い出を心にきざみこんで......。
 式のあと、両親は「治らない病気なら、病気と仲よく付き合っていけばいい......。そういうつもりで、大和と今日までやってきました。この八年間は、とても、しあわせでした。大和のおかげです」と、語ってくれました。
 短い人生だったけれど愛情を一杯受けて逝った大和くんは、きっと、多くの友だちに会うためにも、初盆には帰ってきてくれることでしょう。
 

田尻和光

ページの先頭へ