法話の窓

027 心の初期化

二度三度 掃いて新年 迎えけり

 この句は、今はもう亡くなられましたが、私が存じ上げていたある方の詠まれた俳句です。とても気に入っています。

 新年を迎えるためにあちこちを掃除します。何回も何回も、同じ場所を掃いたり拭いたり...。そしていくら掃除してもまだきれいになっていないという気がして、また同じところを掃除する...、この『二度三度...』の句はそんな気持ちがよく表われた一句だと感じます。

 庭や家の掃除だけではありません。心の大掃除は出来ているでしょうか。きれいになった、さっぱりとした気持ちで、新年を迎える心構えは出来ているでしょうか。自己を何度振り返ってみてもまだ納得できないところがある...。『二度三度 掃いて...』の句は、心の大掃除の意味も含んでいるのです。その点に気づいて欲しいと思います。心の大掃除をして新年を迎えようではありませんか。

 新年を迎えるにあたり『心の初期化』が大切です。

 お坊さんにも似合わず手で字を書くのが苦手な私は、ワードプロセッサー(ワープロ)を使いはじめたのが16・7年前のことでした。その後でパソコンを使い始めました。

 ご存知の方も多いと思いますが、ワープロではフロッピーディスクの初期化という作業が必要です。フロッピーディスクというのはワープロで作った文章を記録・保存するための道具です。

 初めてフロッピーディスクを使用しようとする時、それに何かを記録・ 保存しようとすると、そのフロッピーディスクは初期化しないと決して使用することができません。初期化というのは、空っぽの状態にすることです。たとえば黒板やホワイトボードの字を消して、新しく字が書けるようにすること、と考えたらいいでしょう。

何か新しいことに挑戦するには、やろうと思う決心とともに、新しいものを受け入れられるまっさらな心が必要です。そのためには心の初期化を行なわねばなりません。フロッピーの初期化ならばキーボードのキーひとつを押せばできるのですが、心の初期化はもっと難しそうですね。ああ、フロッピーがうらやましい。

豊岳 澄明

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