法話の窓

041 どう活かす わたしのいのち

あなたは、将来どんな人になりたいと思っていますか?

  他人から好かれる人

  優しい人

  おおらかな人

  他人の気持ちがわかる人

 まさか、他人から嫌がられる人、乱暴な人、自分勝手な人になりたいと思っている人はいないでしょう。それは、他人とのよい関係が自分の幸せにつながるということを意識しているからではないでしょうか。 

 事実、周囲の人たちから頼りにされたり、好感をもたれていると感じているときは、充実感がありますが、逆に頼りにされず、嫌がられていると感じるときは、毎日がつらく、無駄に思えてきます。しかし、周囲との関係ばかりを気にしていたのでは、やがて疲れてしまって虚無感をあじわうことになります。 

 自分の幸せを考え抜き、こういう人になりたいという願いを綴った詩があります。

宮沢賢治の「手帳から」と呼ばれる詩です。その後半に

  東ニ病気ノ子供アレバ 行ッテ看病シテヤリ
  西ニツカレタ母アレバ 行ッテ稲ノ束ヲ負イ
  南ニ死ニソウナ人アレバ 行ッテコワガラナクテモイイト云ヒ
  北ニケンカヤ訴訟ガアレバ ツマラナイカラヤメロト云ヒ
  ヒデリノトキハ ナミダヲナガシ
  サムサノ夏ハ オロオロ歩キ
  ミンナニ デクノボートヨバレ
  ホメラレモセズ クニモサレズ
  サウ云フモノニ
  私ハ ナリタイ

と結んでいます。

 私は、この詩を読んで、平成7年1月17日阪神淡路大震災のとき、おおくの若い人たちが被災した人たちに親身になって援助活動をしていた姿を思い起こします。

 震災後、数日して知り合いの和尚さんたちと、岡山から神戸に行き、倒壊した家屋の柱を炊き出しの薪にするため運んでいると、いつの間にか耳や鼻にピアスをした茶髪の高校生が制服が汚れるのも気にかけず一緒に運んでいたのです。そのとき、何とも言えない爽やかさをあじわいました。

 ある、お茶飲料メーカー主催の、新俳句大賞高校生の部に、岡山県、片山春奈さんの

   こんな日は 風がないから 風になろう

が応募52万句のなかから選ばれました。

 片山さんは「自分がこれからどうなりたいのかを考えていた時、風まかせではなく、自分から風を起こして人を幸せにする人になりたいと思って詠んだ」と、その時の気持を語っています。

村上明道

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