法話の窓

046 お布施

 皆さんは「お布施」という言葉を聞いて、何を連想されますか?

 おそらく、ご法事やお葬式の時、お坊さんにお渡しするお金を連想されたのではないでしょうか?

 もちろんそれも「お布施」です。しかし、それ以外にもいろんな「お布施」があるのです。

 私事で恐縮ですが、私は、若い頃自転車で日本国内を旅行したことがあります。

 その時のことです。もちろん仕事もしていませんでしたからお金もあまり持っていませんでしたので、夜はテントを張り、食事は自炊というスタイルの旅行でした。

 自転車で走っていると、大勢の人から、「どこから来たの?」と笑顔で声をかけていただいたり、「ガンバレよ」と応援していただいたりしました。

 ほんとうに多くの方々からたくさんの「お布施」をいただきながらの旅行でした。
 「えっ、お布施?」と思われる方もあるのではないでしょうか。
 知らないところで心細い時に、笑顔で「どこから来たの」、この一言がどれだけうれしかったことか。峠を登ってる時の「ガンバレよ」。どれだけペダルを踏む足に力がわいたでしょうか。

 金品を施すだけが「お布施」ではないのです。「笑顔」や「温かい言葉」、これも立派な「お布施」なのです。

 この「笑顔」や「言葉」で相手に勇気を与え、元気づけたりと、人のお役に立てるのです。

 お釈迦様も「人様のお役に立つことを喜ぶことは、人として味あうことのできる最高の境地です」と説いておられます。

 このように、いつでもどこでも、何も持っていなくても、誰にでもできる「お布施」があるのです。ただ、この「お布施」は真心をこめて行ってください。

 怖い目つきで「どこから来た」といわれても、全くうれしくないですよね。

 さあ、あなたの笑顔の出番です。

渡辺隆法

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