法話の窓

054 光を信じて

 ご卒業おめでとう。学業を終え、進学や就職で今いちばん希望に燃えていることと思います。今後ますますのご活躍を祈ります。

 春一番が吹き、春雨となってお寺の庭の梅の木も満開となっています。もの言わぬ植物だけど、植物に学ぶ点を今日はお話しましょう。

 アスファルトのわずかな隙間(すきま)を突き破って出て来た兵庫県相生市の『ど根性大根』こと大ちゃんのニュースは列島を駆け巡り、各地の『ど根性野菜』の話題で盛り上がりました。

 私も檀家さんのお参りなどにバイクを利用していますが、アスファルトの脇からいろいろな花が大きくなっているのを毎日見ています。春には、ヨモギが芽をのぞかせてぐんぐん大きくなり、秋には雨が降らなくてもヒマワリやコスモスが大きくなって美しい花を咲かせています。お盆に、熱くて堅い道路を突き破ってユリの花が二本出て、美しく咲いているのを発見した時などは感動を覚えました。たかが一本の花でもたくさんの花を咲かせて道行く私たちの心を和ませてくれます。コンクリートの少しの隙間から、芽を出して育っているたくさんの植物に勇気をもらっています。

 人間社会に例えたら、隅っこにいるいじめられっ子のようですが、たった一人で友達がいなくても、夏の暑さや冬の寒さに耐え、車の排ガスを吸いながら育っている「ど根性大根」や「草花」等の植物の姿に学ぶことができるのではないでしょうか。

 田中修氏の「ふしぎの植物学」(中公新書)を読んでいたら、なるほどと感心することが書いてありました。モヤシというと、何とも頼りない植物のようですが、このモヤシも植物の方から見ると、けっしてひ弱ではありません。「モヤシは、暗黒の中で発芽した芽生えが、『早く光に会いたい』と、光を探し求めて、一生懸命に上へ上へと伸びている姿です。『太陽は上にある』と信じて、ただひたすら背丈を伸ばし生きようとするたくましい姿なのです。だから光が当たれば、上に伸びるのをやめます」

 生物は環境に合わせて成長するということです。モヤシが上に行けば光があると信じているとすれば、私たちも今は苦しくつらくても光に向かって生きていきたい。「ど根性大根」のように苦難に負けず生きていきたい。

 新しいスタートをきる皆さん、ガンバってね。

高須昌明

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