法話の窓

080 貯蓄しよう

貯蓄しようよ。
と言っても、現金や財産の貯蓄ではなく「心の貯蓄」なんです。

 

 この貯蓄とは、人としての徳行のことです。徳行というのはなにも難しいことではなく、朝会えば「おはようございます」昼会えば「こんにちは」夜会えば「こんばんは」これだけで貯蓄になるんですよ。困っている人がいたら、手を貸して上げ、泣いている人がいたら慰めてあげ、悩んでいる人がいたら、相談にのってあげる。

 これでまた、貯蓄ができる。どう、簡単でしょう。ただし、この人、こうしてやれば、なにかお返ししてくれるだろうとか、あの人あれだけしてやったのにお礼のひとつもない。などと求めすぎると貯蓄どころか借金になってしまうので注意が必要です。

 ここのところが難しいといえば難しいでしょうか。どうしても人間には、認めてほしい、褒めてほしい、見てほしいという欲求が強すぎますから。

 仏教の教えに「無財の七施」という教えがあります。お金がかからない、いつでも、どこでも、だれにでも出来る「心の貯蓄方法」です。

 その中にある「布施」という行い。「布施」というと、お寺さんにおあげする御礼とだけ思われるかと思いますが、やさしい言葉、笑顔、やさしい行い、これらが「布施行」でもあり、報いを求めないその行いが心の貯蓄につながるのです。

 やさしい言葉をかけられて面白くない人はいないし、笑顔向けられて怒る人もいないでしょう。かけた人も、かけられた人も「ああなんか気持ちがいいなあ」「喜んでもらえて嬉しいな」と思えたら、心の中にどんどん貯蓄されます。

 そして、いつの日かきっとその貯蓄されたものが光輝く時がきます。だから、若いうちから1個でも2個でも多く貯めておいたほうがいいのです。

 ご存知の宮沢賢治もあの
「雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ」という詩の中で「東ニ病気ノ子供アレバ 行ッテ看病シテヤリ 西ニ疲レタ母アレバ 行ッテソノ稲ノ束ヲ負イ 南ニ死ニソウナ人アレバ 行ッテ怖ガラナクテモイイト云イ 北ニ喧嘩ヤ訴訟ガアレバ ツマラナイカラ止メロト云イ」

 まさに東奔西走して人々のために尽くす。そこには、自分の損得さえない「布施行」です。さあ、私たちも貯蓄しましょう。「心の貯蓄」を。

古山敬光

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